太陽は光の機能ばかりでなく、豊かな自然の熱源でもあります。冬の南側の広縁は日当りが良くてずいぶん暖かく、天気の良い日には暖房もいらないくらいになります。ところが、日射は、冬の暖房負荷を軽減させてくれますが、逆に夏の冷房負荷を増大させます。

この太陽の熱源を上手にコントロールすることは、建物の省エネルギーの大きな助けとなるわけです。

日本は南北に長く、四季がありますから、日射量も各地によって差が大きく、また一年を通じてその変化も著しいものです。図1は1月の月平均の全天日射量の分布を示したものです。東海地方を例にとれば、一日に1u当たり平均して2千キロカロリーの日射量があるということです。また、夏はこの2倍から3倍近い日射量があります。


数時間暖房に相当
図2は、東京の各室における水平、垂直面の日射量の変化を示したものです。これらをもとに、1月の南に面した八畳間に差し込む日射量を略算してみます。窓が床から天井まであり、その高さが2m40cmあるとすると、八畳間には1万キロカロリーほどの熱量が蓄えられることになります。これは、3〜4時間ほど暖房できる熱量に相当します。

一方夏は、この日射(冬の2倍以上あります)のために、逆に冷房の負荷が増します。いかに建築的に冬の日差しを妨げることなく、夏の日差しを遮断するか、その工夫が大切です。

直接的に遮断する方法としては、屋根の軒、ひさしの出、ルーバー、ブラインドなどがよく利用されています。

このうちブラインドは、エネルギーの流れからみると、一部反射はあるものの、建物の中へ入った後の制御ですから、冷房負担の軽減にはあまり効果が期待できないといえるでしょう。
 
図1〜図3は、ブラインドによる日射熱の遮へい効果を表したものです。外部取り付け型のブラインド(図3)の遮へい率は82%ですから、内側取り付け型(図2)の49%、ブラインドなし(図1)の19%に比べてきわめて遮断効果があることがわかります。

朝日のすがずかしさは、季節をこえて貴重なものです。熱量も弱いので、自由に取扱いの出来る内部ブラインドが有効でしょう。西日は強く、また水平に近い角度で差し込みます。西風を入れつつ西日を防ぐには、外部ルーバーが適しているでしょう。


角度や間隔を工夫、風雨に強い材料を
図4は、名古屋地方(北緯35度)の冬至、夏至などの正午の太陽高度を示したものです。南面のひさしは、窓側をhとした時、最低0.2hのひさしの出が必要だということがわかります。

九月中旬ごろはまた残暑がきびしい時です。ひさしの先端部にルーバーを取り付けて、1/3程度に日射を防ぎつつ、3月中旬ごろの春の日を採り入れる工夫が大切です。

ルーバーの角度を冬至の太陽高度に合わせつつ、その間隔を工夫して下さい。

また、風雨に耐える材料の選択と取り付け方法も大切です。そして取り外し可能な夏のすだれの知恵には驚くばかりです。